ほかの惑星の新年を思う(2)
昨日の記事のつづきです。
知的生命体が存在する惑星系
知的生命体の発生条件というものを考えるとき、
- 生命の発生条件
- 生命圏の持続条件
を論ずることが大切であり、これらの条件がどう や に影響するのかを考えます。
まず、1について考察してみましょう。生命の発生条件はよくわかっていないのですが、ここでは、「液体水が存在すること」とざっくりおいてみましょう。惑星系に於いてこの条件を満たす領域をハビタブルゾーンといいます。ハビタブルゾーンは中心星を取り囲む円環状の領域であり、地球軌道は太陽系のハビタブルゾーンに含まれています。円環状の領域の内側では中心星に近いために液体水はすべて蒸発し、外側では凍り付いてしまいます。
このハビタブルゾーンの距離 は中心星の光度 (単位時間当たりの放出エネルギー)で決まります。Stefan-Boltzmannの法則というものを使えば、光度$L$の中心星からある距離 を回る惑星の温度(放射平衡温度) を知ることができて、 が従います。ここではハビタブルゾーンを考えるので、温度を固定すれば、というハビタブルゾーンを規定する式が得られます。
次に、2番目の条件について考えてみます。生命圏の持続可能性は知的生命体に進化するための時間的余裕の必要性から来るものです。地球の場合は生命圏誕生から40億年程度かかって知的生命体が生まれているので、知的生命体存在の条件としては中心星の寿命も長いものがいいと言えそうです。
ここで、恒星の性質について述べておきます。恒星はその一生の大部分を主系列星という、中心部で水素の核融合が起こっている段階で過ごします。恒星には様々な温度や明るさを持っているものがありますが、主系列星というのはその中でも「表面が高温であれば明るく、低温ならば暗い」という関係が成立している恒星です。ちなみに、恒星の光は黒体放射なので、高温なものから順に「青、青白、白、黄、橙、赤」となり、主系列星の関係は「青っぽければ明るく、赤っぽければ暗い」とも言い換えることができます。主系列星は、温度でさらに細かく分類すると、高温なものから順に、「O型・B型・A型・F型・G型・K型・M型」*1と呼ばれます。太陽はG型星に分類され、G型星は表面温度が5000-5700度、黄-黄白の光を放つ恒星です*2。
そもそも、恒星の明るさは核融合の激しさに対応しています。核融合反応が激しければ激しいほど大量の水素を消費し、その分大量のエネルギーが発生します。また、この反応の激しさは、中心部の圧力が大きいほど激しく、中心部の圧力は恒星の質量が大きいほど大きくなるので、結局は、「質量が大きければ明るい」と言えます。理論的には、質量 と光度 の間に、の関係があることが知られています(質量光度関係)。さらに、核融合が激しければ激しいほど水素の消費が激しいため、恒星の寿命が短くなるという性質もあります。
さて、話を戻して知的生命体の発生条件の2番目の条件について考えますが、中心星の寿命が長いほうが知的生命体の発生に有利であるので、軽い恒星を中心とした惑星系が有利であると言えそうです。しかし、軽すぎるのも実はよくないのです。
軽い恒星周りの惑星系では、式(3)から、ハビタブルゾーンが恒星に近いところにやってくることになります。しかしながら、恒星に近いところでは、恒星からの強大な潮汐力が中心星に対する惑星の向きを固定し、中心星の光が当たる半球(昼半球)と当たらない半球(夜半球)ができてしまいます。このような惑星を同期回転惑星と言います。同期回転惑星の生命圏は非常に狭いものになることが予測されており、持続的な生命圏を生み出すのに不利な条件であると言えます。また、別の研究ではありますが、惑星系の形成をシミュレーションした研究でも軽い恒星は不利であるということが示唆されています。
以上から、知的生命体が存在する惑星系はG型星周りの惑星系であるとざっくりおいてみることにします。これによって、恒星の質量範囲が太陽質量±30%と制約できます。
~つづく~