非線型のmatryosika

理数系。勉強したこととか、アイデアとか。

ほかの惑星の新年を思う

皆さま、あけましておめでとうございます&お久しぶりです。

いろいろ忙しく、ブログに手がつかない状況でした。2016年は大学院修士課程に進学し、研究でハワイへ行ったり三重へ行ったり、月の石の解説員をしたりいろいろ充実した一年でした。2017年もリアル/ブログともども充実させたいものです。

さて、毎年、年末になると地球が約一周したのだなあとか考えるんですけども、0:00の瞬間に胸躍っている自分を見つめると、ああ、自分はやっぱり地球人なのだなあと思うわけです。しかしながら、これに関して最近ある可能性に気づき始め、31日はこの可能性がどのくらい妥当かを検証していました。その可能性というのは、「異星の知的生命と時間感覚を共有するとしたら地球の1年の長さは結構妥当な時間長かもしれない」というものです。今日はこれについて考察します。

クロノバイオロジー

異星の知的生命体にとっての時間感覚というものはどのようなものなのでしょうか。生物が感じている時間で最も基本的なものは心拍数なのだということを聞いたことがあります。哺乳類の生涯拍動数は固定されていて、心周期が生物個体の感じている「時」を定めているというものです。ちなみに、人間の場合は心周期が1秒程度らしいです。しかしながら、異星生命体と時間感覚を共有する際にはこれは不都合です。なぜならば、上記の話は哺乳類に限定した話であり、そもそも異星生命体に地球生命のような循環器を求めることすら難しいかもしれないからです。

では、ほかにどのような時間感覚があるのだろうかと考えると、1日、1月、1年の長さに従った生物周期があることが知られています。これらを概日リズム概月リズム概年リズムと呼びます。これらのリズムの起源は、地球惑星科学的に説明することができて、それぞれ、地球の自転周期(昼夜の周期)、月の公転周期(満ち欠けの周期)、地球の公転周期(季節変化の周期)によって強制されていると言えます。どの周期も地球ー月ー太陽のシステムに固有なもののように見えますが、他の惑星系で共有できるものなのでしょうか。

まず、概日リズムや地球の自転周期について考えてみましょう。そもそも、自転周期というのは、惑星の材料物質(微惑星やガス)が持っていた角運動量や、原始惑星同士の衝突、衛星や太陽との潮汐相互作用で決まるもので、これは偶然によって定められると考えてよさそうです。

概月リズムや概年リズムは公転周期で強制されていますが、小天体が大天体の周りをまわる周期 $T$ というのは、大天体の質量  M と小天体の平均軌道半径  r を用いて、次の比例関係式で表されます。 \displaystyle T\propto M^{-\frac{1}{2}}r^{\frac{3}{2}}.\tag{1}これはいわゆるKeplerの第三法則というやつです。概月リズムを司る月の公転周期は、地球質量や月の軌道半径が決めていますが、これは偶然によって決まるものと考えられます。なぜならば、地球質量は太陽系ができたときに地球軌道付近にどのくらい材料物質があったのかで決まりますし、月の軌道パラメータは、月ができたときのジャイアンインパクトの様子で変わってきます。そもそも、今想像している惑星には衛星がない可能性すら考えられ、この場合は概月リズム自体が存在しません。一方、概年リズムはどうでしょうか。概年リズムを司る地球の公転周期は、太陽の質量と地球の公転半径で決まり、これも偶然で決まる要素です。しかしながら、「知的生命体の発生条件」というものを考えれば、中心星質量  M と惑星の軌道半径  r に制限を加えることができるかもしれず、そうであれば、地球生命の概年リズムと異星生命の概年リズムは似ているのではと思ったりしたのが今回の動機となります。

 

~つづく~

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